第1章
第4話
夫からの誘い

そんなある日、チャットログを見つけて半年が過ぎるころでした。
台所で夕飯の片づけをしていると突然、夫からお酒の誘いを受けたのです。(挿絵

『直美・・・こ、今度、一緒に飲みにでもいかないか?』

夫はなんだか緊張した面持ちでした。

「え?珍しい。お酒なんて随分飲んでないわ。嬉しいけど、まみ(子ども)どうするの?連れていけないよ。」

『あ、あぁ・・・そうだった。ごめん・・・』

夫はすぐに諦めてしまいます。
もうちょっと強引に誘ってくれたらいいのに・・・そう内心思います。
昔から夫には決断力が足りない部分があると感じていました。

「両親に預ける?たまには連れて言ったら喜ぶと思うし・・・」

もうなんで私が提案しているのか・・・。

『あ、そ、そうか・・・そうしてくれるか・・・』

「いいよ。ところで、飲みッて何処に行くの?」

『あ、あぁ・・・知り合いが誘ってくれたパーティなんだ・・・』

「へぇ!そんなお付き合いあるんだ。パーティ!素敵!何着て行こうかしら。ドレス買わなきゃ!」

『あ、あぁ・・・ドレスなんか別にいらない見たいだよ。気楽で・・・』

「そ、そう・・・折角お洒落できると思ったのに・・・」

『あは・・・直美は十分・・・き、綺麗だよ・・・』

「どうしたの?熱でもあるの?ねぇ、どんな人が集まるパーティなの?」

『あ、あぁ・・・詳しいことはよく分からないけど、仲の良い夫婦とかカップルが集まる見たい・・・』

「へぇ!あなたそういうの苦手なのかと思ってた。人付き合い昔から避けるし・・・」

『あ、あぁ・・・まぁ・・・そういうのもこれからは必要かなって・・・お、俺達夫婦も・・・さ』

「あは。そうだねえ。私も幼稚園のママ友とは疲れるから、もっと違ったお友達欲しかったから嬉しいわ」

『う、うん・・・ど、どんなパーティかよく分からないから、雰囲気が合わなかったら帰ろう・・・』

「そうだね。で、いつ?何処に行くの?」

『え、えっと明日の20時に●●(神戸の繁華街)・・・』

「えぇ!明日!そ、そっか。じゃあ、両親にすぐ言わなきゃ。もっと早めに言ってよね!」

『ご、ごめん。俺もパーティとかどうしようかと思ってさ。ギリギリになっちゃったんだ。』

「お知り合いの方に参加伝えてないの?突然行ったらびっくりされちゃうかもよ。
座席の確保とか定員とかあるかもだし。」

『あ、それはもう1週間前にお願いしたから・・・』

「え?じゃあその時言ってくれたらいいのに・・・」

『あ、あぁ・・・でもなんか決断できなかったんだよ。ごめん。』

「そう・・・案内状とかないの?パーティの趣旨とか知らないと恥かいちゃうよ。」

『そ、そういうのはないんだ。趣旨は・・・えっと・・・パートナー自慢・・・かな・・・』

「パートナー自慢?何それ・・・」

『えっと、男性は自分の女性パートナーを自慢して、女性は自分の男性パートナーを自慢するような・・・』

「何だか変なパーティね。じゃあ尚更、お洒落しないとじゃない。」

『あ、えっと・・・え、えっと素のままのパートナーを自慢するんだよ。』

「素・・・素かぁ・・・こんなおばさんでも大丈夫なのかなぁ?」

『年齢なんか関係ないよ。20代のカップルもいるみたいだけど、50〜60代のご夫婦もいるらしいし。』

「そうなんだ。素っ裸になればいいのかな・・・」

『え!!』

「あ、心よ。ありのままでいいのかなってこと。」

『う、うん・・・そうみたい。雰囲気が嫌だったらすぐ帰ったらいいし。い、いいかなぁ』

「わかった。じゃあ、両親に連絡するね。OKだったら19時30分に●●(神戸の繁華街)駅の東口でいい?」

『あ、あぁ。丁度、東口が近いみたい。』

夫は結局、本当のことを私に言えませんでした。
「SAKURA」のホームページには、お互いにちゃんと理解してから参加するようにと記載してました。
よく話し合ってから参加するようにと・・・。主催される側からは当然だと思います。
そのような場でトラブルがあってもお困りになられるだけです。最低限のルールなのです。
そう、散々注意書きされてるのに、夫には本当のことを言う勇気がなかったのです。
私達の場合は、幸い私の方がよく理解しているので、主催者さんに迷惑はにはならないと思いました。
お許しいただくしかありません。
でも本当に何も知らずにもし参加したら、ものすごく迷惑なことだと思います。
普通、びっくりして思いっきりひいてしまい言葉も出ず険悪になるか、その場で口論になるのかなと思います。
ちゃんと話せない夫のことは、少し情けない思いも正直ありました。
でも、あの引っ込み思案の夫が、どんな思いで決断したのか、どれだけ葛藤したのか、
そう思うと、夫を愛おしく思う自分も半面いました。
そんな夫の内面を思いつつ話を進めながら陰部をしとどに濡らす自分がいました。
知らんぷりして話をしながら、子宮が収縮を激しく繰り返し全身が震えたのです。
たぶん夫は自分のことで精いっぱいで、震える私の僅かな変化には全く気付きもしなかったと思います。


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